隣の部屋

気が向いたら何か書きます

君のこと

最近よく思い出す人がいて。

よく思い出すっていうか、忘れてないから思い出すもなにも記憶にずっといるんですけど。記憶にずっといるけど記憶だから記憶だけにしかいなくてもう会えない人なんですけど。

死んでしまったので。

なんで今、前よりずっと強く思い出す(便宜的に思い出すっていう言葉を使いますけど正確には思い出しているというわけでじゃないです)のかというと、自宅のすぐそばで解体作業をしている現場があるからなんですけど。君は肉体労働の現場で働いていたことがあったよねぇと思って。ベビーフェイスなのにガタイだけどんどんがっちりしていって、顔面と身体つきのバランスがどんどんおかしくなっていっていやあの時はいじってごめんね、って思うけど笑ってたからまあいいか。そういう感じで、君のことをよく思い出すんですけど、最近特に。私君に嫌われてたとは思ってないんだけど夢にも幻影にも出てきてくれなくて、私はもうなんだ、怖いの苦手だけどもういっそ幽霊でもいいから会いたいと思っているのに全然出てきてくれなくてなんでだよってずっと思っているんですけど、どんどんバキバキがしゃんがしゃんって音がするたびに。いや音がしなくても。

仲良い友だちと友だちの家で朝まで飲んだ時、私がいらん癇癪を起こして一人で勝手に怒って傷付いて外で煙草吸いながら泣きそうになってたら来てくれたよなぁとか、優しいよね君は。すごく優しいなって。ものすごく優しいエピソードじゃないですかこれ。話した内容は全然覚えてないけどなんかすごいくだらないことを言ってくれて笑って、そういや君は言語芸術とか言ってずっとダジャレを言う人で。あの時の朝は気分最悪だったけど楽しかったし気持ちのいい朝だったよねとか。そんなこと君には話したこともなかったけどね、思い出してね。最初に会った時のことは死ぬ前からずっと覚えてて、君が出てる芝居を初めて観に行ったら、写真で知ってたはずの人がどこにもいなくて、えっもしかしてあの人かよ加工しすぎだろ写真って思ったのは内緒だけど(けどあとで本人に言ったけど)、まあ図々しく飲み会まで行って。初対面なのに「次にうちでやる芝居出てくれませんか」って誘って。私人見知りなのに。なんかいけるんちゃうかってたぶん思ったんだよねなぜか。しかもそれいけちゃって出てくれてありがとうございましたその節は。そんでその時もずっとダジャレ言ってて別にそれ面白くないのになんか面白くてずっと笑ってて。君も別に面白いとか面白くないとか関係なくずっと言ってて、この人変な人だなぁってそのときはまぁ初対面だしさすがに思わなかったけど、今思い出すと変な飲み会でしたね。覚えてますか? 覚えてなくてもいいや。そんでそのあとも友だちとまでは言えない微妙な距離で、なのに終電逃して一緒にいた人と君んちにかなり強引におしかけて、家がめちゃくちゃに汚くて笑ったりとか、写真撮ったりとかして、迷惑だったのかもしれないけど迷惑そうにしてもそんなに嫌そうじゃなかったからやっぱり君は優しいよねって、今になって思うけど。いや思ってたけど優しい人に対して優しいって具体的にその場では言ったりしないよね言わなかったね。私は君のこと好きでしたすごく。恋愛のそれじゃないと好きって言っちゃいけないわけじゃないと思うから言うけど。言ってたし。一緒に共演したこともあって、君が台詞盛大に間違えて客席がどよめいてて私もびっくりしすぎてフォローできなかったなとか、あの時の君の顔はたぶんずっと忘れない。笑うわ。

なんで、もう会えないのかまだわかんないし、こういうこと書くのって君を消費してるんじゃないかってもうずっとこわい。こわいけど、言わないと私は、いられないので、これからもちょくちょく言います。ゆるしてね。これは全部嘘じゃないけど嘘だって思われてもいいです。

夢でもし会えたら素敵なことね。